あなたは、稲作が終わった水田にレンゲの花が植わっている光景を見たことがあるでしょうか?
レンゲやクローバーなどのマメ科の植物は、そこに植わっているだけで、土を豊かにしてくれる魔法の植物として、農業になくてはならない存在なんです。
その秘密は、マメ科の植物の根に共生する細菌。
その細菌は根粒菌と呼ばれ、空気中の窒素を固定してくれる力を持っているのです。
クローバーと根粒菌は土中に窒素を固定して土を豊かにする
植物の成長するのに欠かせない栄養素に、窒素があります。
光合成で作った炭水化物と、根から吸収した窒素を組み合わせて、たんぱく質を作り、植物は体を作り上げています。
現代の慣行農法では、主に化学肥料で窒素成分を与えているのですが、環境問題に発展することがわかり問題になっている成分。
しかも、人工的に窒素肥料成分を作り出すには、多くのの資源を使って500℃と1000気圧という環境を作り出して、窒素と水素とを混ぜ合わせて、ようやく肥料として活用できる形に仕上がります。
しかし、マメ科の植物は、常温で常圧である地中で、何の苦も無く窒素を固定することが出来るのです。
しかも地中の窒素濃度が高い場合は、この根粒菌の発生が少なくなるので、土の中に窒素が過剰になることはありません。
まさに、自然の神秘といった感じ。
マメ科の植物の根に団子状の粒粒がくっつく
窒素を固定してくれる根粒菌は、その名の通り、団子状の形をして根にくっついています。
マメ科の植物を、根ごと引き抜くと観察することが出来ます。
白っぽい団子状の中に、数マイクロメートルの微生物が生息しているのです。
1マイクロメートルは、0.001mmで、本当に小さい生物なのです。
根粒菌のように植物と共生しながら、窒素固定を行う細菌を共生窒素固定細菌と呼びます。
植物と微生物のギブアンドテイク
人工的に窒素肥料を作るのには莫大なエネルギーが必要ですが、根粒菌も窒素を固定するのにはエネルギーが必要です。
そのエネルギー源は、根粒菌が共生する植物から得ています。
そしてエネルギーを得る対価として、固定した窒素を植物へと供給する。
こうしたギブアンドテイクによって成り立つ共生関係によって、お互いに助け合って生きているのです。
人間が肥料を与えると共生関係が築けない
さて、こうした理想の共生関係を築いているマメ科の植物と根粒菌ですが、人間が肥料を与えすぎると関係が崩れます。
土の中に窒素肥料成分が多く存在する場合は、植物が根から吸い上げる栄養分だけで、十分足りるようになります。
そうなると植物は、根粒菌に頼る必要がなくなり、根粒菌に与えるはずであった栄養分を与えなくなるのです。
根粒菌も、窒素を固定するにはエネルギーが必要なので、栄養分を分けてくれない植物とは共生できません。
このように、人の手が加わることによって、自然のバランスが崩れてしまうことがあるのです。
以上、マメ科植物と共生する根粒菌についてご紹介してきました。
根粒菌は土中に窒素を水素と結び付けて、アンモニア(NH3)の形で固定して植物との共生関係を築いています。
お米を収穫した後にクローバーやレンゲなどのマメ科の植物を育てるのは、単に景観をよくするためではなく、土に栄養を補給する実用的な農法として、昔から親しまれてきました。
しかし現在は、化学肥料窒素の登場で、あまり見かけることが無くなっています。
窒素肥料による自然環境への影響が問題視されている今、慣行農法を見直すべき時なのかもしれません。