固定種野菜の宅配をメインに通販サイトを運営していますが、ありのファームではF1品種の野菜をまったく育てないというワケではありません。
それは、F1品種の野菜であっても、とても美味しく個性的な品種があるからです。
良くある誤解に、固定種野菜が安全でF1種野菜が危険というものがあるのですが、食べて体に害があるかないかについて食の安全性を考えた時、どちらも安心安全であるということが出来ます。
なぜなら、もとは同じ原理で生み出された野菜同士だから。
ですが、F1品種の野菜だけを育ててしまうと、将来的に少し困ったことがおこる可能性があるので、F1種野菜が悪く言われるようになったのではないかと考えています。
この記事では、固定種野菜とF1野菜にまつわる話を、農家目線でご紹介していきます。
固定種野菜が安全でF1種野菜が危険なの?野菜の種について
まず初めに野菜の固定種とF1種について、簡単に説明したいと思います。
野菜の固定種とは、野菜の交配と選抜を繰り返して良い品種を選定していき、野菜の性質が固定された品種のことを言います。
性質が固定されるとは、種を残し次の世代へと世代交代したときに、同じ性質をもった野菜ができることを言います。
野菜のF1種とは、固定種と同じく野菜の交配と選抜を繰り返して良い品種を選定したものの、性質が固定されず、種を残し次の世代へ世代交代したときに性質が変わってしまう野菜のことを言います。
F1種は、一代雑種、一代交配、交配種とも呼ばれることがあります。
まれに世代交代してなお性質が固定され、そこから固定種へと変化するF1種もあります。
どうでしょうか?
固定種野菜とF1種野菜は、もともと同じ方法で生み出されていたということがわかっていただけると思います。
なので、F1種の野菜が安心安全な野菜でないと言うのならば、同じ仕組みで生み出された固定種もまた、安心安全な野菜ではないと言うことができてしまうのです。
あなたは固定種の野菜を安全だと思いますか?
そうであるならば、F1品種の野菜も同じく安全だと言えます。
固定種野菜が美味しくてF1種野菜が美味しくないという誤解
多くの人が食べているであろう、スーパーやデパートで販売されている野菜は、そのほとんどがF1品種の野菜です。
こういった生鮮食品店で売られているF1品種の特徴として、病気に強い性質や、収穫量が安定して多い、収穫時期や形が揃いやすい、といったものがあります。
生鮮食品店で野菜を売る場合、たくさん収穫できるように病害虫に強くしたり、市場で買い付けてもらえるよう見た目を重視したり、輸送時に野菜が傷んでしまわないよう硬く栽培する必要があるから。
そのため、味や香りや食感は特別重視されていないのです。
こうして、
- スーパーの野菜は美味しくない。
- スーパーの野菜はF1品種ばかり。
- F1品種の野菜は美味しくない。
といった具合で、F1品種の野菜が美味しくないという誤解が生まれたのです。
ですが、美味しいF1品種の野菜も、もちろんあるのです。
始めに解説したように野菜のF1種とは、固定種と同じく野菜の交配と選抜を繰り返して良い品種を選定したものの、性質が固定されず、種を残し次の世代へ世代交代したときに性質が変わってしまう野菜のことを言います。
つまり、味や香りや食感など、食べた時に美味しいと思える品種を選定していけば、美味しいF1品種野菜が生み出せるという理屈。
葉が柔らかかったり、実の可食部分が大きくなったり、甘みやが強かったり、といった性質をもったF1野菜が作りだせるのです。
スーパーでたくさん売るための丈夫なF1品種もあれば、美味しく食べるための繊細なF1品種もある。
つまり美味しいかどうかは、固定種かF1品種かではなく、美味しい品種か美味しくない品種なのかが大事なのです。
F1品種の野菜だけを育ててしまうと困ること
ここまでで、F1品種の野菜だからといったり、安全性に欠けているだとか、美味しくないという誤解を払拭できたと思います。
しかし、F1品種の野菜だけを育てていると、困ったことがおこる可能性があるんです。
野菜のF1種とは、固定種と同じく野菜の交配と選抜を繰り返して良い品種を選定したものの、性質が固定されず、種を残し次の世代へ世代交代したときに性質が変わってしまう野菜のことを言います。
つまり、また同じ品種を育てるためには、そのたびに種を購入する必要があるのです。
種で増やす以外の方法は、種苗法という日本の法律で固く禁止されています。
こうした条件下でF1品種の野菜だけを栽培していると、種を新しく手に入れる手段を失った場合、野菜が作れなくなってしまうという危険があるのです。
種が手に入る場合であっても、種の価格が急激に上昇してしまうと、野菜の値段に直結してF1品種の野菜が高額になってしまう危険がつきまといます。
つまりF1品種の野菜は、食べても無害という面での安全性ではなく、食べるものを安定供給できるといった面での安全性に、少しばかり危険性をはらんでいるということが言えるのです。
こういった食の安全性をめぐって、固定種野菜の存続が言われるようになっているのです。
固定種野菜の伝統と格式を重んじる人たち
どの分野であっても、伝統と格式を重んじるという人たちがいます。
私は趣味でピアノを楽しんでいるのですが、主にバッハやショパンといったクラシックの名曲を好んで弾いています。
逆に演歌や民謡、ポップスなどの曲はあまり弾くことがありません。
これは、現代的な音楽を軽んじているわけではなく、あくまで好み。趣味嗜好です。
音楽の趣味と同じように、食べ物の趣向も人それぞれ。
古くから地域に根付いてきた固定種野菜が好きだという人がいます。
これは別に新しくできたF1品種の野菜を軽んじているわけではなく、あくまで好み。
F1品種の野菜だけを、すべての農家が栽培するようになってしまっては困ってしまうというわけです。
あなたも、好きなものが食べられなくなってしまっては、困りますよね?
なので、ありのファームでは、伝統と格式のある固定種の野菜をメインに栽培しつつも、新しくできたF1品種の野菜も栽培するようにしています。
どちらにも、それぞれ良いところがあるのです。
どちらかしか楽しめないなんて、もったいないじゃないですか。。。