焼き色がついて焦げ目のある野菜を美味しく感じたことはありませんか?
- グリルで焼いたナス
- カレーやハンバーグに入れる飴色玉ねぎ
- バーベキューで食べる焦げ目の付いた野菜
焦げたことによって旨味やコクが増して美味しく感じるのは気のせいではなく、ちゃんと化学で説明がつく現象だったんです。
加熱により野菜の色が濃い褐色になる反応を、メイラード反応(非酵素褐変)と呼び、野菜に含まれる糖分とアミノ酸が結び付いてメラノイジンという成分が作られます。
これらの料理を美味しく仕上げるために、わざと焼き色をつけて野菜を焦がす調理法は、実はとても理にかなっていたのです。
焦げた野菜は何故旨い?メイラード反応で賢く美味しい食卓を
味噌や、リンゴの切り口が時間と共に濃い褐色に変色していく反応を褐変(かっぺん)と呼びます。
これらの現象はリンゴや味噌に含まれる酵素の働きによって起こっています。そのため、酵素的褐変と呼びます。
それに対して、焼きナスや飴色玉ねぎ、バーベキューの野菜やお米のおこげなど、熱による酵素に関係しない褐変のことを、非酵素的褐変と呼びメイラード反応とも呼ばれます。
このメイラード反応は、食材に含まれる糖分とアミノ酸が加熱によって結びつけられ、メラノイジンという成分が生成されることによって起こります。
食材から甘みを感じる糖分と、旨味を感じるアミノ酸が消費されメラノイジンが生成されるので、食材から甘みと旨味が損なわれ、代わりに酸味や苦みや辛味が強く感じられ旨味とコクが増し、加熱することで特有の芳ばしい香りが生まれます。
土鍋で炊いたときにできるご飯のおこげを想像してもらうとわかるように、ほのかな酸味と軽い苦み、そして芳ばしい香りと軽い食感が、ご飯をより美味しく感じさせてくれるんですよね。
メイラード反応は知らなくても広く普及している調理法
メイラード反応という名前は知らなくても、この現象は毎日の料理に、知らず知らずのうちに取り入れられています。
例えば、カレーや肉じゃがを作るときには、材料を煮込む前に具材を炒めますよね。
あれは火の通りを早くしたり、煮崩れを防いだりといった利点もありますが、メイラード反応によってより美味しく料理を仕上げるためでもあったのです。
特にメイラード反応を意識した調理法が、ハンバーグやカレーライスの時に作る、飴色玉ねぎです。
飴色玉ねぎは、玉ねぎをじっくりと火にかけることで、玉ねぎを焦がさないように褐変させ、美味しさをより引き出すための工程。
もちろん、玉ねぎ自身が持つ旨味成分が、熱を加えることによって甘みを強く感じるようになるという面もありますが、それならば飴色の焦げ目をつける必要はありませんからね。
飴色玉ねぎは、メイラード反応を一番身近に感じてもらえる調理工程と言えます。
旨味は多様性を持つことでより強調される
旨味は、一つの旨味成分だけに依存して調理するよりも、複数の旨味成分を一緒にすることで、より一層美味しく感じることが出来ます。
お味噌汁を作るときにも、グルタミン酸が豊富に含まれている昆布だしだけで作るよりも、イノシン酸が含まれているかつお節も合わせたほうが、より美味しいお味噌汁に仕上がるはずです。
旨味成分は、一種類だけをたくさん使うよりも、多様性が増せば増すほど美味しく感じることが出来るのです。
そのため、メイラード反応を利用してメラノイジンをうまく取り入れることで旨味やコクが増すため、さらに美味しく仕上げることが出来ます。
例えば、お味噌汁を作るときにも、具材を最初に焼き色がつく程度に加熱してから調理することで、より美味しく仕上げることが出来るはずです。
メイラード反応は焦げすぎに注意
野菜を加熱して、焼き色を付けることで旨味成分メラノイジンが出るのは良いのですが、焼き色の付け過ぎには注意してください。
加熱し過ぎて、真っ黒になってしまっては、逆効果。
苦みが強くなり過ぎて美味しく感じませんし、焦げた過ぎた野菜は健康にも良くありません。
あくまでも、薄いキツネ色。
美味しそうな、香ばしいかおりが漂ってきたなぁ~
というところで火を止めてください。
過ぎたるは猶及ばざるが如し、なにごともほどほどが肝要です。