美味しい野菜をもっと美味しく食べるコツをご紹介したいと思います。
そのコツは、だしの旨味の相乗効果を利用すること。
多くの野菜に含まれるうまみ成分グルタミン酸をさらに引き立てるために、イノシン酸やグアニル酸という別のうまみ成分をあわせて相乗効果を狙うと、より一層美味しく野菜を食べることが出来ます。
野菜を美味しく食べる「だしのコツ」美味しく減塩できて一石二鳥
キャベツやトマトをスープにして煮込むと、ジンワリと優しい野菜の旨味成分が出てきて、美味しいスープに仕上がりますよね。
あれは、野菜に多く含まれているうまみ成分でアミノ酸の仲間、グルタミン酸がスープに溶けだしているからなんです。
うまみ成分としてグルタミン酸が含まれているのは、昆布などの海藻類やトマトやキャベツなどの野菜類といった食材。
このグルタミン酸。
じつはグルタミン酸単体で食べるよりも、イノシン酸やグアニル酸といった、別種のうまみ成分と合わせると、相乗効果でとても美味しく感じるようになるのです。
イノシン酸は、主に豚肉や鶏肉などの動物性たんぱく質に多く含まれています。
グアニル酸は、干しシイタケや加熱したマッシュルームなどのキノコ類に主に含まれています。
なので、野菜を美味しく食べるときは、肉類や魚介類と、あるいはキノコ類と一緒に調理することで、うまみの相乗効果を狙うことが出来るのです。
日本人は大豆を欧米人はトマトを料理に多く取り入れている
日本人の伝統的な食生活に、和食という文化があります。
お寿司に醤油をつけて食べたり、豆腐の入ったお味噌汁を飲んだり、豆腐と野菜を和えて白和えに、納豆ご飯も定番のメニューです。
外国人の目には、日本人は大豆ばかりかけて食べている、と言われても仕方ないことなのかもしれません。
昔から日本人は、大豆に含まれるうまみ成分のグルタミン酸を活かした食文化とともに生活してきたのです。
対して欧米人はというと、フランス料理やイタリア料理が伝統的な食文化と言えます。
トマトを煮込んでスープにしたり、パスタや焼き魚やステーキにトマトソースをかけたり、サラダにトマトを入れたりといったメニューが定番。
日本人からしたら、外国人はトマトばかり食べていると見えるかもしれません。
トマトにも大豆と同じように、うまみ成分のグルタミン酸が豊富に含まれています。
こうして比較してみると、人類は野菜の旨味成分のグルタミン酸とともに食文化を発展させてきたという共通点を見つけることが出来ます。
野菜を完熟させたり発酵させることで旨味成分が多くなる
野菜の旨味成分であるグルタミン酸は、野菜の中でも特にトマトにとても多く含まれています。
こうしたうまみ成分は、野菜を完熟させたり発酵させることで増えることがわかっています。
特に樹上完熟と言われる、トマトの枝にある間に完熟されたトマトは、さらに多くの旨味成分を持つようになります。
しかし、スーパーなどで売られているトマトは、輸送時間がかかったり、配送中に形が崩れたりしないようにするため、硬く青いまま収穫され、店についてから時間経過とともに赤く色づきます。
そのため、あまり旨味成分が含まれていない場合があります。
赤採りトマトと呼ばれる、真っ赤に熟れるまで樹の上で育てたトマトも売られていることが稀にありますが、美味しいトマトを食べたいなら、赤採りトマトを選ぶようにすると良いです。
トマトに比べて大豆に含まれるグルタミン酸は多くありません。
ですが、和食文化では、大豆を醤油に加工したり、大豆を味噌に加工する工程で、発酵によるうまみ成分を増やすことで、美味しい料理を作り上げています。
醤油や味噌に含まれる旨味成分はグルタミン酸。
旨味成分の相乗効果を狙うなら、イノシン酸が含まれる鰹節や炒り子出汁などの動物性の食材や、グアニル酸が含まれる干しシイタケの戻し汁を上手に取り入れることで、とても美味しい料理に仕上げることが出来ます。
旨味成分を上手に活用することで減塩効果が期待できる
こうした
- グルタミン酸+イノシン酸
- グルタミン酸+グアニル酸
といった、旨味成分の相乗効果を狙うと、より旨味を感じることが出来ます。
そうすることで、塩分を控えめにしてもしっかりとした味に整えることが可能になります。
つまり、減塩料理が出汁の力を借りることで、簡単に作ることが出来るというわけなのです。
減塩料理のだし活用以外のコツはこちらの記事を参考にしてみてください。
鹿児島の郷土料理の豚汁はとても理にかなっている
ありのファームのある鹿児島県には、郷土料理として豚汁というメニューがあります。
豚汁と書いて、「ぶたじる」と読む派と「とんじる」と読む派がいるのですが、個人的には「とんじる」と呼ぶ方が可愛らしくて好きです。
その名の通りお味噌汁に、豚肉の細かく切ったものを入れ、大根やニンジンや里芋などの他こんにゃくなどを入れるのが定番となっています。
お味噌汁に、豚肉さえ入っていれば、それはもう豚汁と言ってよいと思います。
さてこの豚汁、だしの旨味成分的に見ると、とても理にかなったメニューとなっています。
お味噌に含まれる旨味成分のグルタミン酸と、豚肉に含まれるイノシン酸が含まれているので、旨味成分の相乗効果が期待できるため、とても美味しく仕上げることが出来ます。
さらに、豚肉の油によって野菜に含まれる脂溶性ビタミンを効率よく吸収できますし、味噌汁は基本的にスープも全ていただくので水溶性のビタミンも無駄なく吸収できます。
具材の種類を豊富にすることで栄養素のバランスもとれ、煮ることで野菜の嵩を減らして野菜をたくさん食べられる。
なんとも美味しく健康的な、完全食と呼ぶにふさわしい郷土料理なのです。
農林水産省のホームページでも、次世代に伝えたい大切な味として紹介されている豚汁。
是非一度、作ってみてはいかがでしょうか。
ちなみに、豚肉の代わりに鶏肉を使う味噌汁のことを、さつま汁と呼んでいます。