化学肥料のなかでも、特に窒素肥料による環境汚染が最近問題になってきています。
畑の土や、肥料のやりかた、作物の種類によって変わってくるのですが、
作物の窒素肥料の利用率は20~60%ほどと言われており、ほとんど半分以上は無駄にしてしまっているのが現状です。
植物に吸収されずに残ってしまった窒素成分は、空気中や地下水に流出し、地球温暖化や水質汚染へと繋がります。
化学肥料と環境問題 化学肥料は半分を無駄にしている
化学肥料、特に窒素肥料は現在の食卓に、なくてはならない存在となっています。
慣行農法で栽培されている米や小麦などの穀物は、窒素肥料なしでは大量に生産できませんし、牛や豚の餌である飼料植物の栽培にも欠かせません。
オーガニックに興味関心がない人の場合、その体の半分以上が化学肥料で出来ているといっても、過言ではないかもしれません。
私たち人類の食に大きく貢献し、地球全体の人口増加の立役者である化学肥料窒素ですが、最近になって環境問題に発展することがわかってきたのです。
化学肥料は地球温暖化に関係している
環境問題と聞いて、まず最初に思い浮かべる問題は何でしょうか?
テレビや新聞などで、ここ最近とりあげる機会が増えてきた、地球温暖化現象についてではないでしょうか。
温室効果ガスとして一番多く耳にするのは、二酸化炭素ですが、この二酸化炭素の約300倍もの温室効果を持つ気体が、化学肥料の窒素肥料によって増えることがわかってきたのです。
その名も、一酸化二窒素(N2O)と呼ばれる物質です。
この一酸化二窒素は、現在はそれほど量が多いというわけではありませんが、同じ量で比較すると二酸化炭素よりも強い温室効果を持つことがわかっています。
さらに厄介なことに、この物質はオゾン層を破壊する効果もあるということで、今後の増加に警戒する必要があります。
温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)によると、2020年現在、工業化が進んだ1750年よりも23%増加しており、年々増加が続いています。
農業で化学肥料窒素を使う以外にも、家畜からの堆肥を作る過程(家畜の餌を作るときにも化学肥料窒素が多く使われている)や、自然の土壌や海からも発生しています。
自然の営みとしてある程度発生してはいますが、人間の活動によって排出される一酸化二窒素は、農業由来のものが最も多く排出されているのです。
気象庁 一酸化二窒素
https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/n2o_trend.html
世界の一酸化二窒素(N2O)収支 2020年版
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20201005/20201005.html
有機肥料の窒素が脅威になりにくい理由
化学肥料窒素が良くない影響を与える。
じゃあ、有機肥料の窒素は大丈夫なのか?
有機肥料を作る過程について見てみると、動物の餌の肥料として化学肥料を大量に使った場合や、糞尿を堆肥に作り替える過程で一酸化二窒素が発生することがわかっています。
対して化学肥料を製造する過程でも、多くの温暖効果ガスを生成しています。
畑にまくまでに与える自然へのダメージを考えた時には、どちらも環境に優しいとは言えないことは確かです。
ただ、肥料を作る過程は考慮せず、実際に畑にまいた後の環境負荷について見てみると、有機肥料の窒素成分のほうが環境負荷という面では、ある程度安心なのかなという印象です。
といいますのも、化学肥料の成分はとても水に溶けやすく、肥料をまいた後すぐに効果を発揮するのが特徴です。
それに対して、有機肥料は微生物の活動によって、徐々に植物に利用されやすい形に分解してから効果を発揮するので、肥料成分が土に残りやすく、無駄なく作物に吸収されやすい傾向にあります。
そのため、化学肥料窒素のほうが、大気中や地下水に排出されるリスクが高いと考えられるので、より一酸化二窒素の増加に寄与していると思われます。
農家が取り組める化学肥料と環境問題対策
農家が化学肥料による環境問題に対策するためには、まずは化学肥料の使用を徐々に抑えていくのが一番の近道。
もちろん利益がついてこないことには、持続可能な開発目標ではなくなるので、SDGsに反しますし食の安全にもかかわります。
ですが、栽培技術を磨くことで、少しずつではありますが前進することが可能でしょう。
化学肥料をバンバン使って、今さえお金が稼げればそれで良い、では駄目なのです。
地球の未来は、農業従事者の腕にかかっていると言っても、過言ではないかもしれません。
化学肥料窒素に対するありのファームでの取り組み
最後に、手前みそではありますが、ありのファームでの化学肥料と環境問題への取り組みとして、化学肥料と動物性肥料を一切使わないという栽培方法についてお話します。
窒素肥料がなくて、どうやって作物が育つのか?
その秘密は、クローバーにあります。
クローバーはマメ科の植物で、根に、根粒菌と呼ばれる団子状の微生物と共生する性質があります。
この根粒菌は、空気中に存在する窒素を固定し、土を豊かにしてくれる性質がある微生物で、窒素肥料を与えずとも野菜がすくすくと育つ助けになってくれるのです。
クローバーのように、土を耕したり肥沃にしてくれる植物のことを緑肥植物と呼び、環境配慮型の農業に取り組む農家の間では広く普及しています。
以上、化学肥料と環境問題についてお話してきました。
化学肥料は地球温暖化につながるというテーマですが、窒素肥料以外にも種類がありますし、温暖化以外にも環境負荷が問題になっているケースは、様々存在しています。
私たちの食料の安全を守るために、地球環境を犠牲にしてしまっている慣行農法。
このままでは、そう遠くない未来には、持続可能な開発目標どころか、存続可能な地球環境すら怪しくなっているのかもしれません。
自然環境に配慮した農業の発展を、切に願います。