青森県のリンゴ農家、木村秋則さんの、無農薬リンゴを育てることが出来るようになるまでのお話がかかれた、奇跡のリンゴという本を読んだので、あらすじと感想を書いていこうと思います。
この本は、石川拓治さんが著者
NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」監修
ということで、テレビ番組で反響が大きかった木村秋則さんの特集を本にまとめた、という内容になっています。
奇跡のリンゴのあらすじ
これまで、農薬なしでは栽培が不可能と言われていたリンゴ栽培。
リンゴの病気や害虫被害に悩まされながらも、岩木山で偶然出会った自然の光景に天啓を得、無農薬栽培にたどり着いた木村秋則さん。
周囲との摩擦と闘いながらも温かなな人たちに支えられ、自然と闘うのではなく、共存のみちを歩み始める。
そんな彼のいるリンゴ畑は、農薬にあふれた現代社会に浮かぶ、ノアの箱舟のようであった。
人間は植物の寄生虫
奇跡のリンゴという本を読んでいて、一番ゾッとしたのが、この一文。
生態学者に言わせれば、人間は植物の寄生虫ということになる。
これは無農薬リンゴの木村秋則さんが言ったわけではなく、この本を書いた石川拓治さんが生態学者なる人から知りえた情報なのですが、たしかに、そう言われてみればそういう捉え方もできるなと、思ってしまったのです。
普段わたしたち人間が食べているものは、植物である野菜と、植物を食べて育つ家畜。
つまり、食物連鎖という生態系の頂点とされている人ですが、植物があることで生かされている、と捉えることも出来るのです。
寄生虫も、植物に食料を依存している人間も、植物にとっては植物に依存している、同じ寄生虫であるとみることが出来るのではないかと。
慣行農法では、そんな植物を害する病害虫を農薬によって、いわゆる寄生虫を退治していますよね。
それは、まわりまわって、人間自身を退治してしまっていることになるのでは?
と感じてしまったのです。
農薬は、野菜を食べる人への影響を考えてはいますが、農薬を使う農業従事者や、自然環境への配慮はあまりされていません。
いつか、自分自身へ跳ね返ってくるのではないかと、考えさせられる一文でした。
無農薬栽培を試みることが敵対行為につながる
無農薬栽培などのオーガニック野菜や有機栽培が、なかなか普及しないのには、慣行農法であることへのバッシングにつながるのではという指摘が、本書ではされていました。
農薬を使わなくても食料は作れるのに、どうして慣行農法は農薬を使うのか。
そう責められる、あるいは、実際には責められてはいなくとも、慣行農家自身がそういった負い目を感じてしまうのではないか、というお話でした。
同居生活でも似たような話を聞きます。
「隣のAさんは高給取りで家事育児にも積極的らしいよ。」
なんて話を自分のパートナーにしたとします。
暗に、なんであなたはそれが出来ないの?
と詰め寄られているようなものなのです。
こんなことを言われては、プレッシャーを感じてしまいますよね。
だから、慣行農業がさかんな場所では、なかなか自然に配慮した農業が発展しないのではないかと、本では言われていました。
木村秋則さん自身も、まわりとの軋轢があったことは話していましたが、実際に誰と衝突したのかは話して下さらないそうです。
オーガニック野菜が贅沢品じゃなくなる未来を目指して
この本を通じて木村秋則さんが描く理想の農業は、
無農薬栽培で慣行農業と同じように収益を上げられるようになって、だれもが進んで農薬から脱却した農業を営めるようになること。
そして、広くオーガニックな野菜が普及すれば、それに応じで価格が下がり、スーパーなどで普通に買える時代になるという未来です。
現在手に入るオーガニック野菜は、栽培にとても手間がかかるので、そのほかの野菜と比べて割高感がありますよね。
それが、他の野菜と同じ値段にまで下がることで、だれであっても手にしやすい野菜にすることが、木村秋則さんの目標なんだそう。
私個人としては、きちんと労働に見合った値段付けが必要であり、農家が持続可能な営農をしていけるよう、安売りすることには疑問が残ります。
ですが現状は、農家から直接宅配や通販を利用しないと、なかなか無農薬栽培の野菜や果物って手に入らないですよね。
農薬使用野菜か、農薬不使用野菜か、選択の自由が確保できる未来が来ることには、大いに賛同します。
そのためには、有機農家がしっかり利益を出せると示すのが肝心。
未来の若者が、無農薬栽培の農産物を、すすんで作りたいと思えるような。
そんな農業があふれる国になると良いですね。
ハッピーエンドではあるものの辛いシーンがある
この本は、基本的にはハッピーエンドです。
ですが途中、だいぶ過酷な苦労時代の描写があります。
気分が沈んでいるときなどは、読むのを控えたほうが良いかもしれません。
私も、アルバイト時代のページは、読み飛ばしてしまいました。
以上、奇跡のリンゴ「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録のあらすじと感想をまとめてみました。
無農薬で農作物を作るのは、技術的な問題だけではなく、周囲との人間関係が、とても重要なんだなと考えさせられる一冊でした。
無農薬栽培に興味のある方は、是非一度手に取ってみてもらいたい良書です。
本を読むのはちょっと苦手という場合は、
阿部サダヲさんと菅野美穂さんが出演する映画があるので、そちらをご覧になってみてはいかがでしょうか。
木村秋則さんが無農薬栽培を思い立ったのは、福岡正信さんの書いた自然農法の本を、偶然手に取ったことがきっかけ。
生まれた時代が違えば、歴史が全然違っていたことを思うと、自然の巡りあわせというか、なんとも神々しいものを感じてしまいます。
そういう意味でも、自然農法という本は、多くの人に影響を及ぼす、農業界の聖典なんじゃないかなと思わせてくれます。