個人農家の独り言

天空の城ラピュタは何故滅んだか農家が考察する生命多様性説

言わずと知れたスタジオジブリの名作、天空の城ラピュタ。

ラピュタ人は圧倒的な科学力を持ち、世界を支配していた。

およそ考えられる最高の富を持ち、贅沢の限りを尽くしていたがラピュタ人が、700年前に何故滅んでしまったのか。

その原因は、正体不明の疫病が蔓延したからでした。

では、なぜそんな疫病にかかってしまう事態に陥ったのか。

個人農家目線で、ラピュタが滅んでしまった原因について考察してみたいと思います。

天空の城ラピュタは何故滅んだか農家が考察する生命多様性説

天空の城ラピュタが700年間滅んでしまった原因については、天空の城ラピュタ (ロマンアルバム)という公式本にて解説されています。

それによれば、

ラピュタ人はおよそ考えられる最高の富を持ち、ぜいたくの限りをつくしていたが、正体不明の疫病に襲われた。

人はやせおとろえ、ささいな病気にも勝てずバタバタと倒れていった。

とあります。

そこで当時のラピュタ王がついにラピュタを離れ、地上に降りることを決意したのです。

では何故正体不明の疫病に襲われ、ささいな病気にも勝てなくなってしまったのか?

その原因は、ラピュタ人が土から離れたことで免疫力が低下してしまったからだと考えています。

どうしてそういう結論に至ったのか解説します。

農家的思考で考察するラピュタの食料生産システムについて

天空の城ラピュタは、その名の通り土から離れ、空中で生命活動を維持し完結していました。

そうしたときに、どうやって食料を生産していたのだろうかと考えた時に、2つの仮説が成り立ちます。

  • 1地上にある支配地域から食料を調達する
  • 2天空の城内で自給自足する

おそらくですが1の手段は難しいと思います。

食料自給率の低下が社会問題として取りざたされている日本では、食の安全性について危機感をもって問題に取り組んでいることからも明らかなように、食料を仲間内で用意できないことは、かなりの危険を伴います。

ラピュタは地上を支配していたとありますとおり、多かれ少なかれネガティブな感情を、地上人に持たれていたと考えます。

そんな友好的ではない相手に、食料生産を依存するのは、とてもリスキーだからです。

ラピュタでの食料生産は、2の自給自足型であったと考えています。

そうした場合にとられる生産システムは、現代の慣行農法ではなく、水と光と肥料だけで生産されるLEDレタスなどに代表される、工場生産された食量であったはずです。

現代の日本でも植物工場による研究が国によって推進されていますが、ラピュタ内部にはさらに高度な食料工場があるはずです。

ラピュタ人は、ぜいたくの限りを尽くしていたのですから、食に気を使わないはずがありません。

きっと豪勢な美食の限りを尽くしていたことと思います。

土から離れた食料工場は無菌状態で維持されている

土から離れたラピュタでの食量生産は、現代の植物工場と同じく、水と光と肥料成分だけで生産されています。

そこは、野菜の品質を高く保つために、無菌状態であることが理想。

そうでなくては、野菜が傷んでしまいますし、食品衛生上問題が出てきます。

科学技術が発展していた有能なラピュタ人が、そんな自分の生産した食品で、体を害するはずがありません。

抗菌、除菌、殺菌にと、すべての菌を取り除いていたことでしょう。

無菌状態で生命の多様性が失われ免疫力が虚弱に

ラピュタ人が疫病に屈してしまったのは、この無菌状態が根本的な原因であると、個人農家である私は考えます。

基本的に現代の農業経営では、栽培技術を高め品質を安定させ効率よく生産するため、キュウリならキュウリ、ピーマンならピーマンと、同じ野菜を繰り返し栽培します。

そうしたときに、連作障害といって、特定の野菜を栽培し続けていると、病気や害虫に負けてしまったり、収穫量が減ってしまう問題が発生してしまいます。

すこし前までは連作障害を防ぐために、収穫したあとの畑を完全に消毒することで、次のシーズンに備えていました。

そうして栽培しては消毒しを繰り返していたのですが、あるとき問題が起こります。

キュウリが病気に負けやすくなったのです。

病気が出ては、病気にかかったキュウリを取り除き、殺菌をしてその場をしのぐの繰り返し。

そうしていくうちに、今度は病気が殺菌剤に耐性を持つようになり、より強力な薬を使う必要が出てきます。

またある時は、今までは大丈夫だったのに、ちょっとした気温の変化によってキュウリが病気にかかってしまうようにもなりました。

その結果、どんどん病原菌は強くなり、キュウリは病気にかかりやすくなっていき、より強力な薬を使う必要が出てくるようになってしまったのです。

そうした過去の事例から現在では、病原菌や害虫が農薬に耐性を持たないよう、複数の農薬をローテーションさせたり、

菌を殺菌させると同時に、野菜に害はなさないが病原菌と競合したり捕食したりする、有用菌を畑に施すような農法が実施されています。

人に役立つ有用菌の存在

テレビのコマーシャルで、乳酸菌や善玉菌、腸内フローラという単語を聞いたことがありますでしょうか?

菌とは、人に害を与える種類以外にも、有用な働きをしてくれる菌がたくさん存在しています。

最近研究が進んできたのが、体の皮膚表面に存在している皮膚常在菌という細菌。

表皮ブドウ球菌と呼ばれる皮膚常在菌は、皮膚表面に発生する汗や皮脂を餌にグリセリンや脂肪酸を作り出し、バリア機能と肌の調子を整えてくれることがわかっています。

薬用せっけんなどで、日に何度も強く洗いすぎてしまうと、有用な菌まで殺菌してしまうことになるので、いきすぎた清潔志向は免疫力低下につながると言われています。

予防接種にみられる有害菌の有用性

寒くなってくると、新型インフルエンザについてテレビで報道されたりするのを、聞いたことがあるかと思います。

重い症状に耐性をつけるために、予防接種を受けたりする場合もありますよね。

予防接種とは、病気に対抗するために、毒性を弱めた病原菌を意図的に体内にとりこんで、抵抗力をつける行為。

予防接種を逆説的にみれば、病原菌を完全に取り除いた無菌状態を維持することは、人間の免疫力低下につながります。

人は、無菌であればあるほど、免疫力が鍛えられず、虚弱化していくのではないでしょうか。

人は土から離れては生きられない

地球上で、1番菌が生活しやすいのは、どこでしょうか。

菌が繁殖するためには、適度な水分と、適度な温度と、適度な栄養が必要です。

家庭内で言えば台所のシンクのぬめりの上、キッチンスポンジの中、冷蔵庫の野菜室。

こういったところで、雑菌が繫殖しやすいとされています。

このような条件がそろった自然環境というと、それは土です。

土の中は、三相と呼ばれる、個体と液体と気体の3つの物質によって構成されています。

これにより様々な菌類が生活しやすい環境が整えられているのです。

試しに土を少し掘り返して触ってみてください。

ほのかに湿り気を帯びており、冬の間でもほんのり暖かく、落ち葉や虫の亡骸などで養分も豊富に含まれていることがわかると思います。

こうして土の中には、数えきれないほどの量と種類の菌の、最も繁殖しやすい環境が整えられており、生命の多様性にあふれているのです。

菌を含む様々な生命の多様性があることで、特定の菌が繁殖し人間を害するリスクが抑えられます。

なぜなら、様々な生命は、互いに競合し、捕食しあい、自然の奇跡とも呼べる絶妙なバランスで、調和を生み出しているから。

ひとたび人に猛威を振るう菌が繁殖すれば、その菌を捕食する菌が増え、脅威を抑え込みます。

自然の調和がとれていれば、そもそも猛威を振るう菌は、その菌と競合する他の菌とのせめぎあいで、増殖することさえ叶わないのです。

最近では、こうした自然に触れることで、様々な菌を取り込み、腸内細菌の多様性が増し、免疫力の増強に役立つという研究結果も出ています。

理論を証明し、正確なエビデンスを発表するまでには至っていませんが、私自身確かに自然に囲まれた場所で過ごしていると、不思議と体が軽くなったような気になります。

土に触れ様々な菌を取り込むことで、体に有益な細菌の多様性を促すことが出来ます。

土に触れることで、雑菌に対する免疫力を向上させ、疫病に対しての抵抗力が高まるのです。

土があることで、生命の多様性が生まれ、自然の中で病原菌の繁殖を抑えることが出来ます。

土があることで、正体不明の疫病が増えたとしても、菌の多様性によって打ち勝つことが出来るのです。

だから、ひとは、土から離れては生きられないのです。

にんじんさん
にんじんさん
病に打ち勝つには殺菌だけじゃなくて免疫が大事になってくるのね
たまねぎさん
たまねぎさん
土に触れる以外にも菌が豊富な発酵食品や無農薬野菜が有効じゃ

ラピュタ人はおよそ考えられる最高の富を持ち、
ぜいたくの限りをつくしていたが、正体不明の疫病に襲われた。
人はやせおとろえ、ささいな病気にも勝てずバタバタと倒れていった。

その原因は、土から離れたことで、本来獲得できるはずだった菌の多様性が失われ免疫力が培われず、病気に負けるようになったからだと推測します。

現代の日本でも免疫力を鍛えるには、様々な菌に触れる生活が重要なのではないかと私は考えています。

  • 森林浴をする
  • 家庭菜園を始め土に触れる
  • 納豆や味噌などの発酵食品を食べる
  • 無農薬野菜などの殺菌されていない土で育てた野菜を食べる

少し前までは、いたるところで土を見ることが出来ました。

しかし現在では、道路はアスファルトに覆われ、公園の砂場も使えない状態が多く、たまに土を見かけても菌が住みそうもない痩せ細った硬く乾いた場所ばかり。

現代人の免疫力低下は、こうしたところから端を発しているのかもしれません。。。

細菌の集合体のことを細菌叢(さいきんそう)あるいは、マイクロバイオータと呼びます。

そして、細菌のゲノム情報の総称を、マイクロバイオームと呼びます。

このマイクロバイオームが人に与える影響を解明する、ヒトマイクロバイオーム分野の研究が、近年行われるようになってきました。

まだまだ分からないことだらけですが、研究が進めば人々の健康や発展に大きく貢献できる分野として、注目が集まっています。

微生物と人間の健康の関係について詳しく知りたい方は、地質学者と生物学者が執筆したこちらの本がおススメです。

 

 

ABOUT ME
のっち
のっち
私は、鹿児島県志布志市にある畑で営農している個人農家です。 無農薬、無肥料、不耕起、無除草栽培で、安心安全で美味しい野菜は当たり前、環境にも優しい農業を目指しています。