個人農家の独り言

無肥料野菜はどこから栄養を吸収して育つのか自然農の化学性

自然農に興味を持ち始めて、真っ先に疑問に思ったことがあります。

無肥料で育つ野菜はどこから栄養を得て成長しているのだろうか?と。

その答えは、地球の地殻と土に住む土壌微生物の働きにありました。

そして、雨や風や動植物の働きで自然と外から追肥されていたのです。

無肥料野菜はどこから栄養を吸収して育つのか自然農の化学性

地球の表面は地殻と呼ばれる厚さ約35キロメートルの岩板層によっておおわれています。

この地殻には様々な元素が含まれており、酸素やケイ素が大半を占めています。

しかし、このほかにも植物の生長にとって欠かせない

  • リン
  • カリウム
  • カルシウム
  • マグネシウム

これらのミネラルも豊富に含まれているのです。

つまり、植物が育つために必要な栄養素は、すでに地面に存在していたのです。

日本の田畑の半分は黒ボク土である

地球の地殻と言っても、場所によって地表面にある土の性質は大きく異なります。

そこで、日本の田畑の約半分を占めている黒ボク土について考えていきます。

黒ボク土は、火山灰由来の黒い色をした土で、保水性と排水性に富み物理性が良い反面、雨が多い地域では肥料成分が流出しやすいというデメリットを持っています。

日本は高温多湿な気候のため雨が一年を通して多く振るので、黒ボク土では肥料成分が流出しやすく、酸性土になりやすいという問題を抱えています。

植物の生長に欠かせない肥料の三要素について

植物の生長に欠かせない肥料の三要素

  • 窒素
  • リン酸
  • カリウム

について考えてみます。

窒素は、空気中の78%を占める成分で、私たちが意識していないだけで、あたり一面が窒素にあふれています。

マメ科の植物と共生している根粒菌は、空気中の窒素を固定して、植物が利用できる形にしてくれます。

他にも空気中の窒素は、微生物の活動によって、有機物と結びついて土の中に存在しています。

リン酸は岩石や土の中の有機物に含まれています。

しかし、鉄やアルミニウムといったミネラルと結びついていることが多く、水に溶けにくく、植物が吸収できない性質を持っています。

このため、土にリン酸は豊富にあるのに、植物が育たない状態になってしまうのです。

こうした植物が吸収できないリン酸を吸収できる形にしてくれるのがミミズなんです。

ミミズの糞に含まれるリン酸は、ミミズの持つ特殊な酵素の力で、水に溶けやすくなる性質に変わります。

ミミズのほかに、菌根菌と呼ばれる植物の根と共生関係を結ぶ微生物の働きもあります。

菌根菌は、菌糸を根の届かない遠くの場所まで伸ばし、リン酸を植物に渡し、その対価として植物から栄養をもらい共生関係を築いているのです。

自然農では、土を耕さず、農薬や化学肥料を使わないので、こうした微生物たちの営みを邪魔しません。

そのため、肥料を与えずとも、植物はリン酸を吸収することが出来るのです。

植物に対する土壌の役割:JAXA宇宙教育センター
https://edu.jaxa.jp/contents/other/himawari/

カリウムは、もともと岩石などに含まれる成分です。

火山灰を原料とした黒ボク土や、畑の土の下にはとても多くの量が埋蔵されています。

これらに含まれるカリウムは、年月を経て岩石などが風化することにより溶け出しています。

溶け出してきたカリウムは、雨によってすぐに流出してしまうのですが、粘土質の強い土や腐植が豊富であれば、土や腐植と結び付き流出を抑えられ、植物の生長に役立てることが出来ます。

自然農では、畑の雑草を取り除いたり、土を耕したり、農薬や化学肥料で土壌生物群を減らさないので、腐植が豊富に蓄積されカリウムの流出を防ぎます。

そのため植物はカリウムを吸収しやすくなります。

なにもせずとも地球は肥料にあふれていた

こうしてみてみると、地球の地面には人が肥料を与えずとも、植物の生長に必要な肥料成分が、すべてそろっていると言えるのです。

空気は無くなりません。

地殻は約35キロメートルであるのに対して、植物の根が届くのは2~3メートル。

自然って、うまくできているものですね。

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のっち
のっち
私は、鹿児島県志布志市にある畑で営農している個人農家です。 無農薬、無肥料、不耕起、無除草栽培で、安心安全で美味しい野菜は当たり前、環境にも優しい農業を目指しています。