有機野菜の栽培に、肥料として使われている動物性堆肥(牛糞、鶏糞など)
私は、この動物性堆肥を、畑では使わないようにしています。
どうして使わないようにしているかというと、動物性堆肥が作られた過程を、野菜をお届けするお客さんに胸を張って説明できないからです。
- 遺伝子組み換え植物が動物の餌(飼料)として使われていないか
- 農薬や除草剤や化学肥料を使って育てられた飼料を使っていないか
- 抗生物質やホルモン剤を使って動物が育てられていないか
私自身が、牛や鶏を飼育していて、そこから作られた動物性堆肥ならば、自信をもって堆肥が作られる過程を説明することができます。
ですが、よそから購入した動物性堆肥は、このあたりが不透明なので、安心して使うことができない。
なので、使用を控えているのです。
有機野菜について思う事 動物性堆肥って本当に良いものなの?
現在、日本の肉牛や乳牛、ニワトリなどの家畜の飼料は、約75%を輸入品で賄っていることをご存じでしょうか。
これはつまり、動物性堆肥の原材料が、ほとんど外国産であるという事。
これが、動物性堆肥の不透明性を高めている一因です。
遺伝子組み換え植物が餌として使われていないか
外国から輸入されている、牛や鶏の飼料は、その多くが遺伝子組み換え技術を利用して育てられた作物です。
遺伝子組み換え作物とは、病害虫に強い抵抗力を持たせたり、除草剤に対して抵抗力を持たせたり、人工的に植物の遺伝子を組み替えて作られた作物のことを言います。
現在輸入されている、遺伝子組み換え農作物の飼料としての安全性は、「飼料安全法」によって農林水産省が確認しているので、食べる分には安全です。
しかし日本の有機jasのルールでは、遺伝子組み換え技術が禁止されているのに、動物性堆肥の利用は許されているのです。
日本の有機jasのルールで決められているのは、
- 化学的に合成されていないこと
- 遺伝子組み換え技術が使われていないこと
この2つです。
遺伝子組み換えの作物を作って(原材料の生産)、これを肥料に加工するのはNG。
遺伝子組み換えの作物を作って、動物に食べさせる、動物の排泄物を収集し(原材料の生産)、これを肥料に加工するのは現状OK。
なぜ、現状OKかと言いますと、農林水産省の有機農産物及び有機加工食品のJAS規格のQ&Aによりますと、
- 遺伝子組み換え作物を使ってるかどうか見分けられない
- ほとんど遺伝子組み換え作物使ってるから動物性堆肥が入手困難になる
- 遺伝子組み換え作物で出来た堆肥が余っちゃって困る
だから、当分の間は、遺伝子組み換えの作物を飼料として作られた動物堆肥も、使ってい良いよという理由のようです。
(問15-4)遺伝子組換え作物に由来する堆肥の使用は認められますか。
平成18年度の改正において「肥料等の原材料の生産段階において組換えDNA技術が用いられていないものに限る。」と規定され、堆肥についても組換えDNA技術の使用が明確に排除されることとなりました。
しかしながら、現状では、遺伝子組換え作物に由来していないことを確認することが現実的には難しい状況にあります。
このため、これらの資材の活用が困難となることを考慮し、附則において、当分の間使用することができるとされています。
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/qa_nousan_kakou.pdf
国際的な農産物の輸出入を生業としている方がおっしゃるには、日本の有機jasは、ヨーロッパやアメリカのオーガニック規制に比べると、基準がとても甘いんだそう。
海外では、動物性堆肥にも厳しいルールが課せられているのです。
オーガニック規制が緩い日本で、動物性堆肥を利用するのは、ちょっとリスクが大きすぎるかなと、私は思います。
農薬や除草剤や化学肥料を使って育てられた飼料を使っていないか
動物の餌である飼料は、とにかく多くの収穫量を安定して出荷することが求められます。
牛や豚などの家畜は生き物ですので、毎日食べるものが必要ですよね。
現在の日本では食の欧米化が進み、食肉や乳製品の需要は増加しています。
そのため、どうしても効果の高い化学肥料をたくさん使って、早く大量に安定して飼料作物を作る必要性が出てきます。
化学肥料をたくさんつかうと、それだけ雑草が蔓延り、害虫被害にもあいやすくなります。
結果、大量の農薬や除草剤が必要になってくるのです。
また、飼料は外国からの輸入品に大きく依存しています。
飼料に多く使われているトウモロコシについて見ると、主な輸入先はアメリカやブラジル、アルゼンチン。
遠くの国から海を渡って運ばれてくるのですが、その時にカビがついたり、腐ってしまわないように、防腐剤などの薬剤が散布されるというリスクも発生します。
このような育て方をされた飼料を食べて育った、動物の排せつ物を利用して作られた動物性堆肥。
ちょっと、使いたくないなと、思ってしまいませんか?
抗生物質やホルモン剤を使って動物が育てられていないか
狂牛病や、鳥インフルエンザという単語を聞いたことがあるでしょうか。
テレビのニュースで、たまに報道されたりしますよね。
家畜の動物たちも、病気にかかることがあるんです。
ですが病気になってしまっては、食肉や乳製品の生産に悪影響が出るので、そうならないために抗生物質などのお薬を餌に混ぜて与えます。
また、肉質を柔らかく、脂肪を多く蓄えさせるために、ホルモン剤というお薬を与えることもあるそう。
もちろん、日本の農林水産省が認可しているものですから、私たちの体に悪影響が及ぶことはありません。
しかし、こうした薬が、動物性堆肥を通して、間接的に畑の土の中に入り込んでしまうのは、ちょっと抵抗があるんですよね。
私たち人間に害がないのは、国が保証してくれるので安心なんですが、はたして土壌生物たちにとって、本当に害がないのかは、わかりませんもの。
以上、有機野菜について思う事 動物性堆肥って本当に良いものなのか?、についてお話ししました。
- 遺伝子組み換え植物が動物の餌(飼料)として使われていないか
- 農薬や除草剤や化学肥料を使って育てられた飼料を使っていないか
- 抗生物質やホルモン剤を使って動物が育てられていないか
この3つの不透明性が、私が動物性堆肥を使わないようにしている理由です。
農薬を使わずに野菜を育てています。
と言っている農家が、農薬をたっぷり使って作られた動物性肥料を使っています。
と言ってしまっては、本末転倒ですよね。
自然と共に歩む菜園 ありのファームでは、人と自然にやさしい農業を目指して、日々精進していく所存です。