無農薬野菜

肥料を与えると害虫が来る。だから農薬が必要になる。

せっかく愛情込めて育てた花や野菜なのに、害虫に食べられてしまったら悲しいですよね。

でも、じつはその害虫、あなたが呼んでいるのかもしれません。

植物に肥料、特に窒素肥料をたくさん上げ過ぎると、害虫に弱くなってしまうってご存じですか?

窒素肥料を上げ過ぎて窒素過多になると

  • 細胞が膨らみ脆くなる
  • 植物のホルモンバランスが崩れる

という2つの視点から害虫に対する抵抗力が下がってしまい、大変な被害にあってしまうのです。

この記事では、どうして肥料をあげることで植物が害虫にやられてしまうのかを説明しています。

肥料を与えると害虫が来るから農薬が必要になる。

園芸肥料などで配合されている肥料成分のうち、窒素という成分は、植物の茎や葉の成長に欠かせない成分として配合されています。

でもじつは、この窒素を植物に与えてしまいすぎると、逆に植物が弱くなってしまうんです。

その理由は大きく分けてこの2つです。

  • 細胞が膨らみ脆くなる
  • 植物のホルモンバランスが崩れる

いったいどういう理屈なのでしょうか。

窒素を与えすぎると植物の細胞が膨らみ脆くなる

窒素は、植物の体を作っていくのに必要不可欠な成分です。

植物は根から吸収した窒素と、光合成で作った糖を合成させて、たんぱく質を作り体を成長させています。

しかし、窒素肥料を与えすぎてしまうと、窒素が過剰に余ってしまいます。

すると、体を作るために消費しきれずに残った窒素は、硝酸態窒素として細胞の内側に貯蔵されます。

細胞を風船に例えると、窒素が適量の場合はちょうどよい大きさ。

窒素が多すぎる場合は、風船をパンッパンに膨らませすぎた状態。ちょっと触っただけですぐに割れてしまうような状態になるわけです。

細胞が膨らみ過ぎると、細胞を守り覆っている細胞壁と呼ばれる壁が薄く延ばされ、とても脆く破れやすい状態になるのです。

これによって、害虫にとっては脆くて柔らかく、とても食べやすい状態になるのです。

しかも、この細胞内に貯蔵されている硝酸態窒素は、虫にとっては大好物のご馳走なのです。

軟らかくて脆くて美味しいとなれば、害虫が食べないわけないですよね?

さらに、細胞を守っている壁が薄くなるわけですので、防御力も下がってしまいます。

そうすることで、病原菌にも弱くなってしまうのです。

窒素肥料のやり過ぎは、植物にとって良くないというのがわかっていただけるかと思います。

植物のホルモンバランスが崩れる

あまり知られていませんが、植物にもホルモンを生成して、環境に適応できるよう成長する仕組みが備わっています。

そのなかでも、植物には害虫や病原菌を寄せ付けないホルモンが存在しているという研究があります。

そのホルモンがエチレンという物質。

このエチレンは、植物が体内で作ったアミノ酸が形をかえて生成される成分で、病気や虫に対しての忌避効果を発揮するそう。

しかし、このエチレン、窒素肥料を過剰に与えすぎることで、生成する量が減ってしまうという現象が起きます。

窒素肥料は、そのまま直接植物が吸収するわけではなく、土壌内で硝酸態窒素やアンモニア態窒素という形に変わってから吸収されていきます。

このアンモニアが、アミノ酸がエチレンへと変化する過程を阻害してしまうという仕組みだそう。

窒素肥料の与えすぎは、植物の細胞だけでなく、ホルモンバランスを崩して病害虫に対する抵抗力も下げてしまうのです。

窒素を与えすぎないのも良くない

窒素の与えすぎは、植物にとって良くない。

じゃあ、与えなければよいのでは?

実は、そういうわけにもいかないのです。あまりにも窒素が土に含まれていないような、痩せすぎた土地では、やっぱり植物は健康に育ってくれません。

栄養バランスは腹八分目が理想的

栄養は、なによりバランスが大切です。

人間でも動物でも、同じですよね。痩せすぎや太り過ぎは、万病のもと。

どんなにご馳走を出されても、腹八分目に抑えておくことで、健康的な生活がおくれます。

植物も、きっと同じなのです。

昼間、植物は光合成によって、二酸化炭素と水から、糖分を作り出します。

そして夜になると、作った糖分と根から吸収した窒素を合成して、たんぱく質を作っていきます。

この時、あまりに土がやせすぎていて、合成に必要な窒素が不足していた場合どうなるでしょうか。

はい、糖分が余ってしまいますよね。

この糖分、虫にとってはご馳走なのです。

例えば、角砂糖を道に置いておくとどうなるでしょうか。

ちょっと目を離した隙に、虫がわっと湧きませんか?

そうなんです、この糖分が害虫をおびき寄せてしまうのです。

つまり、窒素を与えすぎないのも、虫害を引き起こしてしまう原因の一つというワケです。

肥料は腹八分目を心がける

窒素肥料は、多すぎても少なすぎても植物にとって理想的な環境とは言えません。

害虫や病原菌に対する抵抗力が弱まるばかりか、自ら害虫を呼び寄せてしまうのですから。

現代の農業では、大量生産と安定供給のために、肥料は必須の環境です。

それゆえ虫や病気に侵されやすく、肥料と農薬をセットで運用していくスタイルが確立されています。

無農薬で野菜を育てていくためには、肥料の使い過ぎを改め、適切な量を見極めながらの運用が大切です。

以上、窒素肥料が害虫や病気を呼ぶ仕組みについて解説していきました。

  • 細胞が膨らみ脆くなる
  • 植物のホルモンバランスが崩れる
  • 窒素がなさ過ぎてもダメ

窒素肥料は多くても少なくても駄目。

その見極めが無農薬野菜を育てるために、とても重要な要素になっています。

ABOUT ME
のっち
のっち
私は、鹿児島県志布志市にある畑で営農している個人農家です。 無農薬、無肥料、不耕起、無除草栽培で、安心安全で美味しい野菜は当たり前、環境にも優しい農業を目指しています。